腎形成不全、低形成
子犬と若い犬の腎臓を冒す非常に深刻な発達障害です。
若年性腎疾患(Juvenile
Renal Dysplasia :JRD)、進行性腎疾患(Progressive
Nephropathy:PNP)としても知られています。
RDはここ10年間、スウェーデンのBMDの中で増加しており、注目されています。
RDは1990年にBMDに最初に診断されました。
治療法はありません。
死ぬか、腎不全のため安楽死させるかのどちらかです。
BMDは発症するいくつかの犬種の1つにすぎません。
兆候と診断
この疾患に冒された子犬は腎臓が発育不十分な状態で生まれます。ネフロン(腎臓の基本的な機能単位)が体の発育に比べ未発達な状態です。
ネフロンが決して成長しないため、十分な腎臓の能力は得られません。
スウェーデンのデータでは、診断された平均年齢は15ヶ月ですが、ブリーダーの元にいる間に子犬は兆候を見せるかもしれません。
兆候には個体差があり、それぞれの症例の進行度合いと疾患の程度に依存するかもしれません。
一般的な腎臓疾患と同様、多飲多尿が認められます。
いくつかの子犬については排尿のしつけが難しく思われるかもしれませんが、多飲が始まるまでは元気です。
食欲不振、体重減少、嘔吐、そして脱水を起こすかもしれません。
また、粘膜が白くなったり、悪臭、尿毒症性潰瘍があるかもしれません。
病状の重度な子犬達は成長しないでしょう。
進行の程度が進むにつれ、尿サンプルは希薄になり、色も薄くなり、臭いを持ち、おそらく尿中にはタンパク質が含まれます。
血液検査は貧血とBUNの上昇を示すかもしれません。
超音波検査では、腎臓は小さく、不規則な形状を見せるでしょう。
検死では、腎臓は色が悪く、硬く、また時々こぶ状で、ひずんでいます。
確実な診断は、腎生検か検死(死後解剖)によってのみ可能です。
遺伝形式
単純な常染色体劣性遺伝子によって引き起こされると考えられています。
すなわち子犬が発症するには、両親がキャリアでなければなりません。
統計的には、そのような組み合わせでは25%の子犬が発症し(affected)、50%は保因者(carrier)で、残り25%は影響を受けません(clear)。
しかし、残念ながら、母なる自然は簡単には予測できません。多くの子犬が発症することもあれば、まったく発症しないこともあります。
さらに、病状が軽度な犬達はRDと診断される前に癌のような別の原因で死ぬかもしれません。そして、非常に重度な場合は新生児のうちに死亡し、決してブリーダーによって調査されることはありません。
したがって、両親が実際にこの不治の疾患を運ぶのか、彼らの子犬達が疾患を伝え続けているキャリアであるのかということを知る方法はまったくありません。
これは問題が判明する前に疾患を持つ遺伝子が、どうやって”静かに”広まることができるのか、ということです。
スウェーデンのBMDにおける腎臓疾患 スウェーデンのBMDにおける腎臓疾患の一般的な発生率は、ペット保険会社の統計によると年間0.33%(5頭/年)、そのうちRDは0.88%(1.3頭/年)であると推計されています。
腎臓疾患の大部分はRDではありません。
1991年以来、RDと確定診断されたのは21件です。
オス8頭、メス13頭です。
全てのオーナーが、腎生検か検死に同意するというわけではないので、実頭数はより高い傾向があります。
BMDにそれほど珍しくない遺伝性腎臓疾患である膜性糸球体腎炎(Membraneous
Glomerulonephritis:MGN 通称、家族性腎炎Familial
Nephropathy:FN)
は劣性遺伝子による遺伝と考えられています。
イングリッシュ・コッカースパニエルは遺伝子検査でMGNを確定できますが、BMDのための検査はまだありません。
遺伝性腎臓疾患としてはそれほど一般的ではないものの、スウェーデンの犬種クラブはスウェーデンのBMD総数の2~10%がRDのキャリアであると推計しています。
キャリアを特定するための信頼できる遺伝子検査がまだない場合、疾患の蔓延を防ぐためには診断された症例の登録が必要です。
登録
RDの症例が過去10年の半ばに発生した時、スウェーデンのブリーダーコミュニティはこれを憂慮し、犬種クラブに申し立てて、スウェーデンケネルクラブ(SKK)にこの疾患を”Central
Registration”に加えるよう申し込ませました。
1998年のことです。
”Central
Registration”とは全ての動物病院が疾患についての知識を持っていることを意味します。
そして、症例が診断されたとき、SKKに報告し、SKKはオープンデータベースに登録します。
股関節形成不全と肘関節形成不全はこの時”Central
Registration”を受けた遺伝性疾患です。
コントロールプログラム
登録に加え、診断された犬の両親と兄弟・姉妹は繁殖プールから除かれます。
異母・異父兄弟・姉妹は2歳以前には繁殖されないかもしれません。
インブリード率がより高いとき、劣性遺伝子が表面化する(病気の子犬が産まれる)リスクが高いので、ブリーダーはインブリード率を低く保つよう推奨されます。2~2.5%以下が望ましいです。
スウェーデンの犬種クラブはRDを発症した子犬同様、子犬を生み出した組み合わせについてもリストを管理しています。
そのリストは全てのブリーダーがキャリアを使用するのを避けることができるように、クラブのサイトに掲載されています。
またその情報はBerner-Gardeにも登録されています。
※但し、罹患した犬を生み出した両親、兄弟・姉妹について繁殖プールから除かれるというのは、スェーデン内のルールであり、他国では診断されたにも関わらず、繁殖に用いられています。
また、それ以前に同じ両親から生まれた子達については繁殖に用いられているのが現状です。
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