フォン・ウィルブランド病(von Willebrand's)

フォン・ウィルブランド病とは?
フォン・ウィルブランド病(以下vWD)は通常軽症で、人間と犬に見られるごく一般的な出血性の遺伝性疾患です。
血液凝固の過程において重要な役割を担う、vWD因子(以下vWF)の不足によって引き起こされます。
通常、肉体は複雑な防御システムを通して、出血を引き起こす負傷に反応します。
これは損傷した血管における局部変化で、血小板と呼ばれる血液細胞の活性化と凝固プロセスから成ります。
vWFの減少は、異常な血小板の作用と、長引く出血時間につながります。
罹患した犬(affected dog)は鼻血のような出血の発現を持つ傾向にあり、一般的には外傷や外科的処置(手術)の際、出血の増加を経験します。
疾患の3タイプは、vWFの割合と機能に基づいて区別されています。
犬においてタイプⅠは最も一般的で、軽度から中程度の異常な出血があり、症状はvWFのレベルに依存します。非常にまれなタイプⅡとⅢは大量の異常出血を引き起こす疾患です。

遺伝形式
最も一般的なタイプⅠは、不完全な常染色体優性遺伝であると考えられています。
これは両親の内どちらかが遺伝子を運ぶなら(carrierなら)、子供達に遺伝することを意味します。
しかし、全ての子供達が同等に影響を受けるわけではないでしょう。
タイプⅠを持つ犬はvWFが減少していますが、レベルは1~60%です。
両方の親からタイプⅠの遺伝子を引き継いだ動物は(同型接合:ホモ)死産か、出生後まもなく死にます。
タイプⅢは比較的まれで、常染色体劣性遺伝です。
両方の親(臨床症状のないcarrier)から異常な遺伝子を引き継いだ場合のみに動物は罹患(affected)します。
罹患した犬(affected dog)はvWFを全く持ちませんが、保因犬(carrier)である両親は通常15~60%のvWFを持っています。
タイプⅡは非常にまれで、常染色体劣性遺伝です。
タイプⅡ、Ⅲは重い出血異常を示します。
※vWFレベル Normal : 70%以上、Borderline : 50~69%、Abnormal : 50%以下

臨床的特徴(症状
多くの犬がvWDにより影響を受けますが、重大な問題を持つのはわずかな割合です。
vWDを持つ犬は、鼻血、歯茎からの出血、発情期や出産後に出血が長引く傾向があります。
乳歯の生え変わりの時や誕生時の臍の緒からの出血が長引くこともあるかもしれません。
手術後や外傷による過剰な出血は一般的で、この病状の最初のサインかもしれません。
また、尿や便に出血を見るかもしれません。
vWDを持つほとんどの犬は、見つからずに済むかまたは適切な処置が可能な時々の出血がある程度で、普通の生活を送ることができます。
他の病気や肉体的、精神的ストレスは出血の発現を悪化させるでしょう。
affected dogでは、どんな一般薬も使用する前に獣医師に相談するのがベストです。
例えばアスピリンのように血小板の作用を変化させる薬は、出血性疾患を持つ犬では使用を避けるべきです。

診断
vWDの出血の程度はかなり差があります。3~5歳になるまで疾患が診断されないこともしばしばあります。
獣医師は、不可解な鼻血や手術中の激しい出血のような異常出血の発現により、vWDを疑うかもしれません。
死産や出生後すぐの死は、両方の親がvWDの保因犬(carrier)である結果かもしれません。
vWDを診断可能な特殊検査があります。
1つはDNA検査です。そしてもう1つはvWFの血中濃度の測定検査です。

治療方法
この病状は回復することはできませんが、対処することはできます。
診断を下すとき獣医師はこの疾患について話し合うでしょう。
長時間の圧迫をすることによって、おそらく軽い出血はコントロールすることができるでしょう。
他の状況では、焼灼(電気メスによる)や縫合のような獣医師による処置が必要かもしれません。 大量出血した場合、輸血でvWFを管理することにより処置します。
手術を必要とするなら、出血性疾患の程度と手術のタイプによって、獣医師は予防策としてあらかじめ輸血を推奨するかもしれません。
もし甲状腺機能低下症の診断を受けていれば、甲状腺ホルモン補助剤は出血のコントロールを助けるかもしれません。
※罹患犬の治療、その他の検査方法についてはこちら

繁殖について
vWDを持つ犬(affected)、保因犬(carrier)共に用いるべきではありません。



References:

Crook A, Hill B and Dawson S  Canine Inherited Disorders Database(www.upei.ca/cidd), copyright 1998; Sir James Dunn Animal Welfare Centre (Atlantic Veterinary College, University of Prince Edward Island,
Canada)  and the Canadian Veterinary Medical Association.
 


検査機関
バーニーズのvWDはタイプⅠです。
幸いなことにバーニーズではvWDのDNA検査が可能です。
GTGとVetGenで簡単に検査を行うことができます。
検査方法についてはGTGの日本語サイトを参考にしてください。(VetGenも同じです)
また検査結果はどちらのラボのものでもOFAに登録できます。
 

GTG : Genetic Technologies

VetGen  : Veterinary Genetic Services




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